【電子商店繁盛記 Episode=0 】藁をもつかむ

1995年。会社の大変な事実が発覚したその年、このままでは存続不可能ということは明確だったのだが、ここで私たちの運命を握る人物が登場する。

当社の前社長であり、現会長だ。

北海道から集団就職で東京に出てきて、都内にある電機製造メーカーの経理事務に従事。仕事ぶりは優秀で、当時そのメーカーさんの番頭さん的存在であり経理はすべて彼にまかされていたが、義理の父もその昔そこに勤めていたこともあり独立する際には会長にずいぶんとめんどうを見てもらったのだそうだ。

独立してからもしばらく、帳簿を見てもらっており仕事に集中できた義理の父はもともと営業センスは秀でていたので、順調に会社は成長していった。

しかし、会長は頭脳明晰で相当優秀な人物なのだが、それゆえにとても厳しい。言っていることは無駄がなく間違いがないが、元来おおらかな性格の義理の父とは反りがあわず次第に、経理について注意されることに嫌気が差し、会長から遠のく結果となった。

世の中が景気のよい時であれば、多少はどんぶり勘定でも会社は経営できるが、景気が悪い時にはそれなりの営業努力や数字を把握しておかないと、資金繰りは悪化する一方だ。

以前は会長に帳簿を見てもらっていたが、手を離れてからは自己流となり積み重なった赤字を補填することも出来ず、もう手のつけられない状態の帳簿を目の前にして、義理の母は決したように言った。

もう一度、会長に相談しよう。

藁をもつかむ思いだった。

*気長に次回をお待ちください、、、、m(_ _)m