顔を合わせれば、義理の父と堂園は喧嘩。という日々の中、仕事も少ないので私自身もやることもなく、よく堂園の工事や納品に一緒に車に同乗してついていくことがあった。
車の中から外を眺めているだけでも気晴らしになったし、何より車の中で色々話すことも出来たからだ。
何か転機がある時、いつもの日常と変わらないにも関わらず強く記憶に残ることがある。
ある日のドライヴが私たちの中では生涯忘れられない記憶の1つだ。
都内に納品に行くというので、私もついていくことにした。その時にこんな話になった。
その当時使っていたパソコンは、知り合いの工事業者に頂いたもので、ウインドウズ以前の本当に初期型のパソコンだった。
このパソコンで何をしていたかというと、主に見積もりくらい。ただ、このパソコンを頂いたおかげで、以前に区のやっているパソコン教室に行ったりして、勉強するきっかけになっていた。
そして96年。確かウインドウズ95が出た頃だったかと思うのだが、それでパソコンを新しくするとインターネットというのが出来るようになるんだ、という話題になった。ウインドウズを入れたからってネットに即つなげるとい話ではないのだが、ちょうどインターネットが話題になりはじめた頃で、新しいパソコンにすればそれが容易に設定が出来るようになる、ということだったのだと思う。
「インターネットって、このまえTVでやってたけど、なんか海外のホームページ?っていうのを見たり、買い物とかしたりできるんだってね?」
その程度の知識だった。
海外のホームページには興味はあるけれど、買い物って言ったって別に欲しいものもないしなあ。と思った。でもその時に堂園が
「照明器具をホームページで売ってみようか?」
と言い出した。私はその時に、こういったと思う。
「どうやって送るの?」
照明器具のかさばる箱を、ワレモノを、どうやって送るというのか?今のように、宅配便が大活躍している時代と違う。
「うーん。やってみないとわからないよ。宅配便で送れるんじゃないか?」
雲をつかむような漠然とした会話だった。
でも肝心の新しいパソコンを買うお金が捻出できない。
ここで、私はすっかり忘れてしまったのだが、どうやら私が貯金から買ってもいいという話になって、私がお金を出したらしい。
なぜか私はこの部分については、全然覚えてないのだが、インターネットで照明器具を売ろうか?という話や、その時にどのあたりを車で走っていたのか?とか、宅配便で送るって想像つかないなあ、と思ったことなど、鮮明に思い出すことが出来る。
本当にこれが2人でネットショップについて話をした一番最初のことだ。
都内に向かう車の中で、こうやって私たちのネットショップは生まれたのだ。