【電子商店繁盛記 Episode=0 】恐怖の冷凍おにぎり

また久しぶりにうちの会長の話に戻りたいと思う。

そう、あの鬼会長のエピソードだ。

とにかく無駄な経費はかけない主義の会長だが、私生活にもそれは及ぶようで、いや、これは1つの趣味なんじゃないかとも思うが、とにかく安売りスーパーで1円でも安く食品を買うことが好きな人だった。

私たちもそれに見習うべきなんだろうが、チラシを見比べて、どこどこのスーパーに自転車を走らせるということは特にしていなかった。でもとりたて贅沢品を買った覚えもない。

それに郷を煮やした会長は、日曜日になると自分の地元で安く仕入れた、牛乳とか卵や、基本的に料理に使うものをわざわざ持ってきた。もちろんタダではない。その分はきちんと払った。

これには私たちも結構面食らった。

確かに1円でも安い牛乳を手に入れることはありがたいが、電車で30分ほどの距離を休日返上して持ってきてくれるのは申し訳なかったし、何よりそこまでしてもらう意味もよくわからなかった。

でもそこまでして、生活を切り詰めるということを意識してほしい。

という意図であった。

確かに、私たちは困窮している割には、なかなか呑気な雰囲気がなくならなかったと思う。生活全般に強く意識しないと、この状況を乗り切ることは出来ない。それがちっとも会長には伝わっていなかったということだ。

タイ米でも食うぐらいの意識はないのか!

そう怒られたことがあった。

でもむしろタイ米のほうが当時は入手するには大変だった。

って、そういうことではない!!(笑)

とにかく生活を切り詰めろ。

会長の口癖だった。

ある時は、もうこれは時効なので追及はしないでほしいし、その店はもう無くなってしまったのであえて書くが、会長は某コンビニで月1だけ、週末夜中に働いていた。

これはお金のためではなく、親戚がどうしても週末の夜のバイトが手配がつかないので月1だけ、シフトを替わってあげていたという諸事情があってのことなのだが(困っている人がいると見捨てられない)そこで、期限切れのおにぎりとか、ブリトーを持って帰ってきたのだ。その日の期限切れなら、まだいい。

その親戚も、月1に来る会長のために、1ヶ月分の期限切れのおにぎりやブリトーを冷凍しておくのだ。それを持ってくるのだ。私たちに、、、、。

この冷凍したおにぎりっていうのが、死ぬほど不味かった。

まずレンジをかけても、手作りのおにぎりと違うので、色んな保存料なども含まれているに違いない、やわらかくならないのだ。

外側だけは、一見やわらかそうに見えるのだが、一口食べてみると

ボロボロボロボロ、、、、、

硬くなった米粒1粒、1粒が一気にバラバラになって、下に落ちた。

義理の妹も、ためしに会社のお昼用に持っていったところ、同僚と食べている時に、バラバラバラと落ちて非常に困ったという。

私はこのエピソードを、本当に切ないと思うが、同時に笑えた。

私はおにぎりは不味くて、ほとんど食べなかったが、ブリトーは案外旨かった。なので、ブリトーは大人気で、すぐ無くなってしまった。

結局申し訳ないが、おにぎりは半分くらいは捨ててしまったと思う。

ブリトーを見ると、今でも当時をちょっと思い出すが、そんな訳でお金を払って買う気がしない。

冷凍庫にぎっしり詰まったおにぎりを思い出すと、今でもちょっとぞっとする。